震災法律相談Q&A

2011年3月11日に起きた地震や津波に遭われた方々の力になれればと思います(弁護士法人杜協同)

原発による避難区域での建物建築

Q:建設会社を経営しています。

 大震災前に請負契約を締結して、着工するばかりになっていた工事現場が福島第1原発から半径20キロメートル内の場所にあります。

 工事は中止しているのですが、今後契約はどうなるのでしょうか。

 なお当社の契約書は民間(旧四会)連合協定を用いています。

A:半径20キロメートルであれば、政府の指示による避難区域です。

 避難区域で工事の施工は困難ですので、中止せざるを得ません。

 民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款32条1項cは不可抗力などによって請負人が施工できないときには工事を中止することができると定めています。

 

Q:契約上、工事を中止できることは解りましたが、原発の収束の見通しがなかなか立たない状況では、中止したままになるのでしょうか。

A:同約款32条4項aは中止期間が工期の4分の1以上か2ヶ月以上になったときは、請負人から契約を解除できると定めています。

 本件では大震災による中止から2ヶ月以上経過していますので、契約を解除して白紙に戻すことができます。

 

Q:実は当社ではもう1件福島県の契約現場があります。

 福島第1原発から半径31キロメートル離れたS市の土地ですが、避難区域ではないようなのです。

A:地図を見てみると1キロメートル先までは緊急的避難準備区域に指定されているのですが、契約現場は指定区域ではありませんね。

 緊急的避難準備区域とは常に緊急時には避難可能な準備が必要で、自主的な避難をし、子どもや妊婦等は区域に入らないようにし、学校等も休校とされています。

 そこから1キロメートルしか離れていないとすれば、工事にも様々な支障がありそうですね。

 

Q:その通りなのです。

 注文者は何としてでも工事を続けて欲しいという意向なのですが、原発から31キロメートルしか離れていないということで、現場に来てくれる職人さんの確保や材料を搬入することが難しい状況なのです。

 それでも工事を続けなければならないのでしょうか。

A:半径20キロメートル内の避難区域のように、直ちに「不可抗力などによって請負人が施工できない」とは言えないとしても、職人さんの確保や資材の搬入に大きな支障があれば、施工に困難が生じていることは明らかです。

 また、原発の収束予想がついていませんので、何時になったら施工の支障がなくなるのか不透明な状況です。

 万が一状況が悪化すれば、避難区域に組み入れられることもないとは言えません。

 これらを総合的に判断すると、一旦は工事を中止して、その期間が長くなれば、先ほどの事例と同様に契約の解除ができると考えられます。

 但し、一方的な解除によってトラブルが大きくなることも考えられますので、まずは注文者と十分に協議してみることをお勧めします。

 

(関弁連編集の「Q&A 災害時の法律実務ハンドブック」(新日本法規)及び近弁連編集の「地震に伴う法律問題Q&A」(商事法務研究会)を基にして、解りやすく説明しました。)