震災法律相談Q&A

2011年3月11日に起きた地震や津波に遭われた方々の力になれればと思います(弁護士法人杜協同)

原発事故による風評被害(1)-風評被害とは-

Q:原発事故により福島県を中心として農作物・水産物が買い控えられる、ホテルや旅館のキャンセルが相次ぐといった事態が生じ、「風評被害」ということが大きな問題になっています。

 そもそも風評被害とはどのような意味なのですか。

A:「風評被害」という言葉はこれまで厳密に定義されて使われてきたわけではありません。

 災害情報や環境情報に付随する社会現象を表したマスコミ用語だと言われています。

 風評被害の研究をしている東洋大学社会学部の関谷直也准教授によると、「ある事件・事故・環境汚染・災害が大々的に報道されることによって、本来安全とされる食品・商品・土地を人々が危険視し、消費や観光をやめることによって引き起こされる経済的被害」を意味するとされています。

 

Q:原子力以外の分野でも「風評被害」が問題となったケースがあるのですか。

A:まずは社会的に有名になったものとして貝割れ大根事件をあげることができます。

 これは1996年に発生した病原菌O-157による集団食中毒に関して、原因食材が断定できる段階ではなかったにもかかわらず、厚生大臣が貝割れ大根が最も可能性が高いと公表したことから、貝割れ大根が疑われた結果、当該地域だけではなく、全国的に買い控えられて生産者・販売者が損害を被ったという事件でした。

 

Q:そのケースは損害賠償訴訟になったのですか。

A:地域の施設を運営する生産者・販売者が原告となった訴訟で大阪高裁平成16年2月19日判決は、厚生省の公表が誤解を招きかねない不十分な内容であるとして国の賠償責任を認めました。

 また、地域以外の生産者や業界団体も別途訴訟を提起し、東京地裁平成15年5月21日判決はやはり国の賠償責任を認めました。

 

Q:テレビ番組の報道が問題となった事件があったように覚えているのですか。

A:1999年の所沢ダイオキシン事件がそうです。

 テレビの報道番組がゴミ焼却場からダキオキシンが放出されていることにより葉物野菜から高濃度の検出がされたと報道し、消費者が買い控えた結果、埼玉県産の野菜価格が暴落したという事件です。

 これについても報道の根拠に誤ったデータがあったり、誤解を招きかねないイメージ映像を流したことが問題とされ、訴訟になりました。

 平成15年10月26日に最高裁は農家らの請求を認めなかった原審を取り消して、差し戻す判決を下しました。最終的には和解で決着したようです。

 

Q:そういった経緯があって今回の原子力の風評被害につながるわけですね。

A:次回は原子力の風評被害に関するこれまでの裁判例を見ていくことにしましょう。

 

(関弁連編集の「Q&A 災害時の法律実務ハンドブック」(新日本法規)及び近弁連編集の「地震に伴う法律問題Q&A」(商事法務研究会)を基にして、解りやすく説明しました。)