震災法律相談Q&A

2011年3月11日に起きた地震や津波に遭われた方々の力になれればと思います(弁護士法人杜協同)

原発による損害の賠償(1)-無過失・無限責任-

Q:福島第1原発の事故による様々な損害の賠償問題が議論されています。

 今後の賠償・補償の基本的な仕組みを教えて下さい。

A:「原子力損害の賠償に関する法律」がこの様な場合に適用される法律となります。

 法律の概要を箇条書きにしてみました。

  ・ 原子力事業者に無過失責任を課す(3条)。責任の制限なし

  ・ 原子力事業者への責任の集中(4条)

  ・ 損害賠償措置を義務づけ(6条)-原子力損害賠償責任保険契約(8条)

  ・ 原子力事業者の責任が1200億円を超えた場合の国の援助(16条)

  ・ 原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介、一般的指針策定(18条)

 

Q:無過失責任ということは、原子力事業者に落ち度がなかったことを証明できたとしても責任は免れないということでしょうか。

A:基本的にはその通りです。

 しかしながら同法3条1項但し書きは「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない。」と規定しています。

 但し書が適用されて免責されるのは、隕石の落下や戦争などに限定されるというのが多数の意見のようです。

 枝野官房長官も「安易に免責の措置が取られることは、この経緯と社会状況からあり得ない」という見解を示しています。

 

Q:原子力事業者の責任が制限されていないとのことですが、1200億円が上限ではないのですか。

A:原子力事業者の責任はあくまでも無限責任です。

 1200億円という数字は損害賠償措置としての原子力損害賠償責任保険の契約金額ですので、これに限定されることはありません。

 

Q:新聞報道では、責任の範囲について議論があるという話も紹介されていたのですが。

A:文部科学省のホームページには次のような見解が表明されています。

   「原賠法では、万一原子力損害が発生した場合、原子力事業者は生じた原子力損害

    の全額を賠償する義務を負っています(無限責任主義)。

    従って、1200億円を支払えばそれ以上は賠償請求に応じなくてもよい

    のではなくて、この1200億円は、万一原子力損害が発生した場合、

    被害者に対して迅速かつ確実に賠償の支払いを行うための保険に過ぎません。

    1200億円を超える損害額については、自らの財力をもって支払う義務が残ります。

    なお、事業者の財力等から見て必要があれば、国が必要な援助を行うことが可能

    となっており、被害者の保護に遺漏がないよう措置されています。」

 

Q:原子力損害賠償紛争審査会の果たす役割はどのようなものですか。

A:この審査会は能見善久学習院大学法務研究科教授を会長とする10名の学識経験者からなるものですが、原子力損害賠償に関する一般的な指針を示すことが最も重要です。

 平成23年4月28日には危険区域からの避難や農作物の出荷制限など、事故後の政府指示で発生した被害を賠償対象とする第1次案を発表しました。

 第2次案では風評被害についても対象とすることが検討されているようです。

 

(関弁連編集の「Q&A 災害時の法律実務ハンドブック」(新日本法規)及び近弁連編集の「地震に伴う法律問題Q&A」(商事法務研究会)を基にして、解りやすく説明しました。)