Q:住んでいた借家が地震で一部損壊しました。
余震もあって怖いので、一時的に別の場所に避難しようと思っています。
建物が壊れたために住めなくなったのだから、家賃は払わなくてもいいですよね。
A:いえ、この場合は賃料支払義務が生じてしまうおそれがあります。
賃貸借契約においては、賃貸人は賃借人に目的物を使用収益させる義務を、賃借人は賃料を支払う義務を負っていますが、例えば避難勧告が出ているなど、目的建物の使用が客観的に不可能な場合には、賃料の支払い義務は生じないと考えられています。
しかし、建物が客観的に使用収益できる状態にあるのに、賃借人が主観的な事情で使用収益をしないときには、賃料の支払いを拒むことができないとした判例があります(大判明37・9・29)。
したがって、建物の損壊の程度にもよりますが、余震もあって怖いというだけでは賃料は支払わなければならないと思います。
Q:そうなんですか。しかし、1週間後から家主が損壊部分の修理をするそうで、修理の期間中一時的に建物から出るようにと言われています。
この修理期間中の家賃は支払わなければならないのですか。
A:まず前提として、修理のため家主から一時的な退去要請があった場合には、借家人は必要な範囲でこれに応じなければなりません(民法606条2項)。
これに従わないと、契約解除の理由とされてしまうこともあるので注意が必要です。
そして、修理のために明渡している間は借家を使用収益できないので、家賃を支払う必要はありません。
なお、修理のために仮住まいに引越したとしても、引越費用や仮住まいの家賃等は家主に請求することはできません。
これは必要な修繕が家主の権利でもあるため、それによって賃借人に損害が生じても賠償請求ができないとされているためです。
(関弁連編集の「Q&A 災害時の法律実務ハンドブック」(新日本法規)及び近弁連編集の「地震に伴う法律問題Q&A」(商事法務研究会)を基にして、解りやすく説明しました。)