震災法律相談Q&A

2011年3月11日に起きた地震や津波に遭われた方々の力になれればと思います(弁護士法人杜協同)

親が行方不明の場合の相続関係

Q:津波で漁師だった父親が行方不明のままです。

 父の財産について、相続は開始するのでしょうか。

A:行方不明だからといって、直ちに相続が開始することはありません。

 認定死亡または失踪宣告がなされることが必要です。

 

Q:認定死亡とは、どのような制度ですか。

A:震災や津波などの災害で死亡が確実なのに死亡が確認できない場合(遺体が確認されない場合が典型です)に、取り調べをした官公署(警察署長など)が死亡地の市町村長へ死亡報告をし、本人の戸籍簿に死亡の記載を行う制度です(戸籍法89条)。

 戸籍記載の日に死亡したものとして相続が開始します。

 今回の津波による行方不明の場合は、認定死亡がなされる可能性が高いと思われます。

 

Q:失踪宣告とは、どのような制度ですか。

A:生死不明の者を民法上死亡したものとして扱う制度です。

 今回の場合は、津波による危難が去った後、生死が1年間明らかでないときに、行方不明者の身分上・財産上の利害関係人が、不在者の住所地の家庭裁判所に失踪宣告の審判を申し立てることになります(民法30条2項)。

 失踪宣告審判が確定すると、津波の危難が去った時に死亡したものとみなされます(民法31条)。

 その結果、お父様の財産につき、相続が開始します。

 

Q:認定死亡の後に父の生存が確認された場合には、どうなりますか。
A:
是非生きていて欲しいですね。行方不明者が生存していることが判明すれば、認定死亡の効力は失われ、戸籍の訂正が行われます。

 

Q:認定死亡から生存判明までの間に、相続人が不動産を売却してしまった場合には、売却行為は有効なのですか。

A:行方不明者が実は生存していることを知らないで行った行為については例外的に有効とする考え方と、当然に無効となるという考え方とがあります。

 学説上は前者の考えが有力と考えられていますが、この点については、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。

 

Q:失踪宣告の後に父の生存が確認された場合には、どうなりますか。

A:こちらは、当然には失踪宣告の効果は失われません。

 本人または利害関係人の請求により家庭裁判所が取消しの審判を行い、失踪宣告を取り消すことが必要です(民法32条1項前段)。

 あなたは利害関係人に当たりますので、取消しの審判を申し立てられます。

 

Q:失踪宣告から宣告取消までの間に父の家を売却してしまった場合には、売却行為は有効なのですか。
A:
一般には、売主と買主の方の双方がお父様の生存を知らないで売却がなされた場合には、売却行為は有効と考えられています(民法32条1項後段)。

 

(関弁連編集の「Q&A 災害時の法律実務ハンドブック」(新日本法規)及び近弁連編集の「地震に伴う法律問題Q&A」(商事法務研究会)を基にして、解りやすく説明しました。)